BRAND STORY 01
ひと:PEOPLE
2024.02.16

[前編] 人間らしく暮らし続けるために TAYUTAUが届けたいものとは

プロローグ:
住宅ブランド『TAYUTAU』に込められた思いや願い、そしてブランドが出来上がるまでの道筋を、ファウンダー・建築家・ブランドコンサルタントそれぞれの目線から紐解きます。「人間らしく暮らし続ける」ために住まいに必要なものとは一体何か。魅力のある土地の景観を活かし、その街の価値まで高める新たな分譲地のあり方とは。TAYUTAUのブランドストーリーを探る。

INTERVIEW MEMBER

SET
ファウンダー
谷 賢一郎
Tani Kenichiro

株式会社セット代表取締役。周辺環境とそこに住まう人々に対して、ローインパクトであることを第一に考え、湘南・鎌倉エリアを中心に分譲事業を行う。建物が建つ各土地に相応しい風景を創造することで、地域の景観を守り価値を高める。

MOLX.Ltd
建築家
佐藤 欣裕
Sato Yasuhiro

有限会社もるくす建築社 / 佐藤欣裕建築設計事務所代表 一級建築士。自然のもたらす流れを理解し、その力に逆らわず活かす、原理的な住まいをつくり続ける建築事務所。湧水に囲まれた田園地帯(秋田県仙北郡美郷町)にオフィスを構え、環境建築分野を中心に活動を行う。

ブランドコンサルタント
山田 真澄
Masumi Yamada

UNIIDEO株式会社代表取締役。「志を持つすべての住宅・不動産企業に、ブランドを。そして成果を。」をスローガンに日本中の住宅・不動産企業のブランドづくりから、成果を出すためのプロモーションまで、企業成長のためのサポートを一貫して行う。

INDEX
目次

山田さん:
今回は住宅ブランド『TAYUTAU=(たゆたう)』がなぜできたのか。何を大切につくりあげられてきたのか、TAYUTAUが掲げる”人間らしく暮らし続ける”とは、どんな暮らしなのかについて詳しくお伺いしたいと思います。

谷さん、佐藤さん:
よろしくお願いします。

01. プロジェクトが始まったきっかけ

山田:
まず、佐藤さんと谷さんの出会いを教えてください。

谷:
私が佐藤さんと初めてお会いしたのは、もう数年前のことになります。温熱環境を中心とした環境建築の分野で注目されていた佐藤さんの建築に興味をもったので、秋田まで講演を聞きに行きました。

山田:
なるほど。御社としても佐藤さんの建築に関する考え方に共感する部分があったということでしょうか?

谷:
そうですね。「環境に配慮した建築をつくる」考え方や本当に必要なことだけを考え抜いた「原理的な住まいをつくる」というスタンスに共感していました。

佐藤:
ありがとうございます。たしかにセットさんには分譲住宅をつくる会社として独自の思想があるので、共感していただける部分があったのかもしれませんね。

谷:
はい。そもそも私たちがメインの商圏としている藤沢や鎌倉などのエリアは、独特の個性をもった魅力的な土地が多いと感じます。そういった土地の景観を壊すのではなく、保全し継承していけるような仕事をしていくために、佐藤さんの考え方を取り入れたかった。実際に講演を聞いて「いつかこの方と一緒に仕事がしたい」そんな思いが芽生えました。そしてその数ヶ月後、TAYUTAU第一弾となる北鎌倉山ノ内の土地を見つけ、「絶対に佐藤さんの建築が合う」と直感し設計を依頼しました。

山田:
「”原理的な住まい”をつくる。」というのがTAYUTAUプロジェクトのキーワードにもなっていましたね。私も初めてお聞きする考え方だったのですが、改めて佐藤さんに”原理的な住まい”とはどういった家なのか、お聞きしてもよいでしょうか?

佐藤:
なかなか難しいんですよね(笑)。あえてまとめるならば「風の流れや日射環境、蓄熱など、自然の力をうまく活かし、心地よく暮らせる家の形を一つひとつ紐解いていった先にある」でしょうか。そういった自然界の原理に逆らわない住まいのことを”原理的な住まい”と呼んでいます。延べ床面積の広さや断熱性能における一般的に良しとされる数値が、そこの環境や住む人のことを考えたら過剰すぎる場合もありますよね。

山田:
たしかに数値が良いとなんとなく価値が高いのかなって思うこともあります。ただそれだけを追い求めると、実際に住む人のことを考えた時に最良じゃない場合もあるということですね。

佐藤:
仰る通りです。だからこそ、その家が立つ環境の一つひとつに向き合って、丁寧に住まいをつくっていくことが大事だと考えています。

山田:
ありがとうございます。素敵な考え方ですね。
谷さんから北鎌倉山ノ内の設計依頼があったとき、佐藤さんはどう思われましたか?

佐藤:
単純に「面白そう」だと感じました。鎌倉という人気のエリアで、住宅を設計できる機会は滅多にありません。ただ、実際に土地を見てみないと僕が担当者として適しているのか判断できないので、すぐに現地にいきました。第一印象は「いい意味で鎌倉らしい土地」自然環境が周りに程よくあって、少し湿気を帯びたような落ち着きがあると感じました。この場所ならきっと良い仕事ができると感じて、依頼を受けることにしたんです。

02.「いい住まい」の議論の末に

山田:
佐藤さんは、さまざまな視点で建築を考えられている印象があります。TAYUTAUにおいて、どんな軸を持って設計に取り組まれているのか、もう少し詳しく伺いたいです。

佐藤:
僕が全体計画の中で最も注視したことは、複数の住宅を同時に建てるという点でした。まず建物が周辺環境に与える影響を考えます。1つの土地に1棟の住宅を建てるより、2棟、3棟と数が増えるに連れて、その土地への影響は大きくなりますよね。

山田:
1つの土地に複数の家をつくる、分譲地ならではの視点ですね。

佐藤:
そうです。今回の場合3棟の建物が周辺環境に与える影響を考慮しつつ、区画の中でも、奥・真ん中・手前と、それぞれ微妙に異なる環境に合わせた計画を進めていきました。例えば「真ん中の家だけ暮らしにくい」みたいなことにならないように、その区画にあった住まいを考えるわけです。どの家でも豊かな暮らしを過ごしてもらうために、それぞれの住宅を固有のものとして設計しつつ、分譲地としての連続性も忘れないように計画しました。

山田:
一つひとつの住宅での心地よい暮らしと、3つ並ぶ住まいの景観が街に与える影響。それらのバランスをうまく取りながら、どちらも最善な形にまとめていくことを設計では気をつけられていたのですね。今回のプランは具体的にどのように決まっていったのでしょうか。

谷:
本当にたくさんの議論を交わしました。主に電話やメールでやりとりをしていたのですが、最終的に突き詰めないといけない部分は、佐藤さんのオフィスがある秋田まで伺って、膝を付き合わせて話をしたんです。

佐藤:
そうでしたね。僕たちには積み重ねてきた住宅における理想の寸法があります。一方で、セットさんにも分譲事業者として培ってきた経験の中から導き出された理想の寸法がある。お互いのこだわりをすり合わせながら、心地よく暮らすために人が本当に求めるものが何かを考え抜きました。

谷:
その過程の中で自分たちがいかに固定概念に縛られているのかに、気づくことができました。「この広さがないといけない」とか、「間取りはこの向きじゃだめだ」とか。本当に必要なものは何かということを考え直す機会となりました。

山田:
両者の「いい住まい」の考え方を時間をかけて調和することで、プランが決まっていったのですね。

03.ブランド化にかける想い

山田:
実はファーストプランが決まった時にはまだ、『TAYUTAU』というブランドではありませんでしたよね。私たちユニィディオに、この北鎌倉山ノ内の物件を基に「ブランドとして展開したい」とお話をもらったのもこの頃だったかと思います。他の分譲プロジェクトと同じように売りに出すことも可能だったかと思いますが、なぜブランドとして確立させたいと考えたのでしょうか。

谷:
それは、私たちの想いの部分をしっかりと届けたいと思ったからです。私たちは、ただ住宅が売れればいいという考えはいっさいなく、魅力のある土地の景観を活かし守ることまで考慮した新しい建物を誕生させる。そうすることで、その街の価値まで高めていくことを大切にしてきました。それを確実に叶えるためには、施主の個性が外観に現れる注文住宅ではなく、その土地に馴染む姿を考え抜いた分譲住宅として提供することが最適だと考えています。北鎌倉山ノ内プロジェクトは、この想いをより多くの人に知っていただく良い機会であると感じたので、ブランド構築をすることを決めました。

山田:
たしかに、より多くの人に自分たちの想いを一貫性を持って届けるためには、ブランド化することが一つの選択肢となりえますね。いまでこそ『TAYUTAU』というネーミングや『しぜんと、人に向く』というブランドコンセプトが定められていますがこちらもまた、たくさんの議論がありました。秋田に伺ってはじめて佐藤さんの建築を見学し、ヒアリングをさせていただいたことが懐かしいです。

谷:
山田さんと一緒に、佐藤さんのオフィスでお話を伺いましたね。そこから数ヶ月に渡ってじっくりとつくりこんでいく中で、このブランドのブレない軸をしっかりと整理できたように思います。

山田さん:
改めて、決まったネーミングやコンセプトを見てどうでしょうか。

谷さん:
時間が経つにつれてどんどん馴染んできて、決定当初よりもしっくりきています。
『TAYUTAU』というネーミングに関しても、佐藤さんの建築の中で大切にされている「ゆらぎ」だったり「心地よさ」が表現されていると思います。今後も定めたブランドの考え方を軸にいい住宅を提供していきたいと社内でも熱量が高まっているんです。

山田さん:
ありがとうございます!そう言っていただけて本当によかったです。
私が印象的だったのは、お二人のお考えに良い意味で被りが少なかったことでした。谷さんは土地や地域をどう活かし、守り、受け継いでいくのかという視点。一方で佐藤さんからは人にとって本当に必要な住宅とは何かという視点で多くの意見が交わされました。結果的には、家の外部環境に対する思いと、内部環境に対する思い。それぞれの考えがうまく融合し、プロジェクトはいい方向に向かっていった印象があります。

後編へ、つづく。

撮影協力:鎌倉青山 kamakura seizan

Photographed by Kuramoto Akari & UNIIDEO INC.

WRITER
TAYUTAU 編集部
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