HOUSE 01
住まい:HOUSE
2024.06.28

人と森を活かす大和張りの住まい

プロローグ:
人間らしく暮らし続ける。そのために、その土地で暮らす人にとって必要なことだけを考え抜いたTAYUTAUの住まい。四季の移り変わりを感じながら、心地よく過ごすために外壁に取り入れられた「大和張り」には、人だけでなく森を守りたいという思いがありました。今回は、TAYUTAUの外壁のこだわりである「大和張り」に焦点をあてます。
INDEX
目次

01. そもそも 大和張りとは

「大和張り」この言葉を聞いたことはありますか。大和張りとは、小幅の板材を間隔をあけて張り、その上から板の両端が重なるようにして張り合わせていく日本の伝統技法のひとつです。光が差し込むと陰影が生まれる、規則的で凹凸のある独自の張り方には、あたたかな趣が感じられます。

互い違いに木材を組む大和張りは、通気性を高めつつ、視線を遮ることができると古くから建物と歩道を分ける塀として用いられてきました。そんな、大和張りに目をつけたのは、秋田県で設計事務所を営む建築家の佐藤 欣裕氏。これまで塀に用いられることの多かった大和張りを住宅の外壁に取り入れることで、壁の内側にたまる湿気を逃がし、家を長く健康な状態に保つ方法を考えだしました。

今回、TAYUTAUにも、この大和張りの技法が取り入れられています。

02. 大和張りが住まいにもたらす価値

外壁に大和張りを用いた住まいには、住まいにとってより良いエッセンスがつまっています。

街に馴染み、人に安らぎをあたえる

木材を張り合わせた見た目にどこかなつかしさを覚える大和張りは、自然ゆたかな環境によく馴染み、景観をそこなうことがありません。

大和張りは、その環境にいい影響を与えるだけではなく、そこに住まう人にもより良い影響をあたえてくれます。それは、経年変化を楽しめること。一般的な住宅の外壁で用いられる、窯業サイディングとはことなり、大和張りの外壁は無垢の木材が使用されています。雨風にさらされ、すこしづつ木材の表面は、美しいシルバーグレーに色を変える。時間とともに味わいを深める木の家は、建てた瞬間だけではなく、5年後、10年後もの長い時間、住む人を楽しませてくれます。

呼吸する家が湿気から家をまもる

木材の大敵ともいえるのが、湿気です。外壁が雨にさらされたあと、できる限り早く木材を乾燥させるために、大和張りの木材は「縦に」張り合わされています。

  • point01. 「縦に張ることで水切れがよくなる」
    板材を縦に張り合わせていくことで、水切れがよくなります。
    濡れても、水が下につたって流れていきやすい構造で、木材に水が留まらず、すぐに乾く。
    反りが出にくいのも、縦に張ることで得られる効果のひとつです。
  • point02. 「湿気を外に逃がすための通気層」
    交互に重ねて張り合わせることで通気層が確保される大和張りは、壁の中の湿気を外に逃がす構造になっています。躯体の中に湿気が入りこむと、家を支える木材が傷み、建物の寿命を縮める原因になりかねません。木そのものがもつ力を活かすことで、過度なテクノロジーを必要とせず、家を湿気から守ることができます。通気性に優れた大和張りの家は、まるで建物自身が呼吸しているかのように、空気をしぜんと循環させながら、正常な状態を保っています。

空気の力で熱を遮断する

心地よい暮らしに欠かせないのは、過ごしやすい温熱環境です。

大和張りには互い違いに張ることで生まれる空気の層が壁の内側に存在します。空気は層となることで熱を通しづらくなり、断熱材としての役割を担います。壁面に生まれる15ミリほどの空気の層によって、家の中の温度が外気温に左右されにくい環境がつくられているのです。

空気層が家中をぐるりと包んで、冬暖かく、夏涼しい。大和張りの家は、空気の力によって心地よい室内環境が守られているのです。

長く住まうために、メンテナンス性に目を向ける

大和張りの外壁は、木材に不具合がでたとき、その一部だけを取り除いて張り替えることが可能です。多くの住宅の外壁に用いられている窯業系サイディングは、1枚のサイズが大きく、部分的に補修をしたいと思っても、簡単に直すことはできません。

気になる箇所だけを手直ししながら長く使い続けていける。メンテナンスの手間やコストがかからないことも、木材を重ね合わせながらつくる、大和張りの魅力ひとつです。

03. 大和張りに屋久島地杉を選ぶ理由

大和張りの外壁に用いられているのは、屋久島の地杉です。
数ある木材の中で屋久杉の地杉が選ばれた背景には、「森を活かしたい」そういった願いもありました。

しなやかにつよい屋久島地杉の木

1年のうち大半が雨である屋久島で育つ屋久島地杉は、一般的な杉と比べて樹脂の量が豊富です。樹脂の量が多いと腐りにくく、虫を寄せつけない特性をもち、その耐久性は他の木材とは別格と言われるほど。

さらに、ゆるやかに成長する屋久島地杉は、木目がこまかく刻まれるため、木材の表情が美しく、高い強度も持ち合わせます。屋久島という、台風や寒暖差の多い過酷な環境で育った杉だからこそ、湿気に屈しず、高い強度を併せ持つのです。

しぜんの循環を生み出すために

屋久島に生えている杉には、「屋久杉」「小杉」「地杉」の3種類の杉があります。
・屋久杉は、樹齢1,000年以上を超える自生の杉。
・小杉とは、樹齢1,000年に満たない若い杉。

そして、TAYUTAUで使用されている「地杉」は、人の手によって屋久杉の種の苗木や接ぎ木から植林された杉。自生ではなく、戦後、建築資材用に植えられたものです。ところが、林業の衰退につれて植えられた地杉は放置され、管理が行き届かなくなるほど乱立するようになっていました。この現状を改善すべく、乱雑に生えてしまった地杉を製品化して活かしていくプロジェクトが立ち上がり、TAYUTAUもそのプロジェクトに参画しています。

TAYUTAUの物件で使用しているように、木が消費され林業の活性化が進んでいけば、乱立していた木が適切な量に調整され、本来保護すべき希少性の高い自生の屋久杉を守り、さらにその先で屋久島全体の生態系を守ることにつながっていく。大和張りに屋久島地杉を取り入れた背景には、人だけでなく「森も活かしたい」という思いが込められています。

04. 人も森も、いきいきと

大和張りは、そこに住む人や環境にいい影響を与えるだけではなく、遠く離れた森にもプラスの影響をあたえることができる。TAYUTAUの家は、しぜんにも人にも寄りそう、そんなやさしい住まいを目指しています。

WRITER
TAYUTAU 編集部
住まい:HOUSE
2024.06.28
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